大阪高等裁判所 昭和54年(行ス)3号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【説明】
裁物例等については、原決定の解説(本誌三八七号一〇八頁)を参照。
〔主文〕
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
【判旨】
一本件抗告の趣旨は、「原決定を次のとおり変更する。相手方の本件執行停止の申立を却下する。手続費用はすべて相手方の負担とする。」との裁判を求めるというにあり、その理由は別紙抗告理由書記載のとおりである。
二当裁判所は、相手方の本件執行停止の申立は理由があるものと判断する。その理由は、次に付加するほかは原決定の理由と同一であるから、これを引用する。
(一) 本件記録によると、相手方は一般乗用旅客自動車運送事業等を営む株式会社であるが、右運送事業に関し別紙違反事実一覧表記載のとおりの違反行為をしたこと、抗告人はこれを理由として昭和五四年一月一九日相手方に対し道路運送法四三条の規定に基づき一般乗用旅客自動車運送事業の免許取消処分をしたことを一応認めることができる。
ところで、本件免許取消処分が裁量行為であり、処分理由となつた違反事実が多数にのぼるとしても、右各違反行為の態様、情状にてらし免許取消という厳重な処分が裁量権の限界を超えている疑いが全くないわけではなく、右処分の取消を求める本案について理由がないとみえる疎明が十分とはいえない。
(二) また、本件疎明資料によると、相手方が抗告人から文書警告を受けた後も相手方の従業員による乗車拒否や交通事故があつたけれども、相手方はその後個人別指導票を作成し指導記録簿を設けるなどして従業員に対する指導監督を強化し、警告事項について違反行為の反復がないよう留意し改善を計つており、昭和五四年一月以降はこれらの違反行為が確認されていないことが一応認められる。右事実によると、本件免許取消処分の執行を停止することによつて旅客、公衆及び相手方従業員に対し損害ないし不安を与える蓋然性は少なく、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとは認められず、抗告人の主張及び疎明を参酌しても、なお本件執行停止によつて公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあることを認めるに十分でない。一方相手方は、執行を停止されないかぎり、本件取消処分により事業存立を失つて解散せざるをえず、回復困難な損害を受けることが明らかである。
三よつて、原決定は相当であつて本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。
(川添萬夫 吉田秀文 中川敏男)